絵に描いた餅を食べる方法(10)
 -悪人にだって友情はあるんだぁ!!-


前々回、3人の生物学者が遺伝の法則の再発見を行ったことはわかった。
しかしながらまだ謎は残っていた。遺伝子の正体は何か?

遺伝学、という学問は実のところ「遺伝子」の本体がわからなくても
ある程度進めることができる。
例えば髪の毛が先祖がずっと金髪の人と先祖がずっと黒髪の人が結婚すると
子供は黒髪になる。(純系同士の交配)
ところが、その黒髪の人の子供が金髪の人と結婚するとその子供は
金髪だったり黒髪だったりする。(F2においての表現系)

まぁそういう表面的な「形質」はおいておいて、ではそれを何が伝えるのか?

まず一番最初に気がついた人は誰になるのだろうか?
染色体の上に遺伝情報があることに1902年に気がついたサットン、そして
遺伝の法則の再発見を行った一人モーガンが1926年に遺伝子は染色体の
上に存在する
ことを発見した。

しかしここからが厄介である。
染色体はDNAと多数のたんぱく質からなる。さて、どちらが遺伝子の「運び役」なのか?

現在我々はその正体を知っている。
しかしオズワルド・エイブリーが行った実験がなかったとしたら我々は未だに
ゲノムを何一つ理解できていなかったかもしれない。

エイブリーは元々、肺炎を起こす原因菌の一種である「肺炎双球菌」について
研究していた。今でこそ肺炎なんか治すのは病院いけばすむことであるが、
かつては病院ですら直接治せる薬などなかったのだ。
本人の免疫力に頼る必要があった。

エイブリーは面白いことに気がついた。肺炎双球菌にはS型、R型の2種類のタイプが
あるのだが、S型のみが病原性を持つ。で、どっちも加熱すると死ぬ。
ところが、である。生きたR型の菌にS型の菌の加熱後の残骸を混ぜてマウスに
注射したら、なぜか存在しないはずのS型が出現したのだ!

これは変だ。
つまりS型菌の形質を「伝える」何かが残骸の中に残っている。
当時、遺伝子を伝える物質は「たんぱく質」だと信じられていた。
しかし考えてみてほしい。加熱すると多くのたんぱく質は熱変性を起こす。
だとするとたんぱく質が何かを伝えられるだろうか?
…となると…エイブリーは実験を重ねた結果こう結論付けた。

「遺伝子の本質はDNAである」

しかし当時の学会では全然受け入れられなかった。
ところがここで一人の男はその意見に同意していた。後のジェームス・ワトソンである。
すでにヤツは水面下でうごめき始めていた。

エイブリーが頑張ってたんぱく質を酵素やらなんやらで分解しまくり、
DNAを精製し続けて同じ結果になると主張しても学会は動かなかった。
何故か?

DNAが持つ情報はわずか4種類だからである。ATGC、ビット列だとわずか2ビットで
表記できてしまう。それが伝える情報ってどれだけだよ?
20080309:掲示板でのご指摘ありがとうございました。修正しました。
バイトなら全部1バイトじゃんか…
…まーコンピュータ屋から言わせれば「んならコンピュータなんて01じゃねーか
といいたいところではある。結局エイブリーもそこまでは迫れなかった。

さて、そのエイブリーの研究を元に、アーウィン・シャラガフが研究を続け
あることに気がついた。
「すべての生物のDNA塩基はATとGCが同じ数ずつ含まれている」
でもそこで彼は思考停止してしまった…

のちにワトソンのヤツはこうぼやいたらしい。
「ATとGCが対になってるのはちょっと考えりゃわかるだろ。オスと雌が対に
 なったり、生物で重要なものは対になってるものさ」と。
 
ではいよいよ、今回の主役たちに登場してもらおう。
今回の主役は4人。ルー大柴似の男ジェームス・ワトソンとフランシス・クリック、
そしてロザリンド・フランクリン、そのボスのモーリス・ウィルキンスである。

ロザリンド・フランクリンは生物学史上、もっとも不幸な女性であると思う。
何故か。彼女こそがDNAが2重螺旋であり、それが対になった構造を
「実際にX線回折で捕らえた」
真の主人公であるからだ。にもかかわらず彼女には何の栄誉も与えられず、
X線の照射のしすぎが原因で37歳でがんで死んでしまう。

さて人物関係であるが、まず最初にワトソンとクリックは早い段階で意気投合し、
2人でDNAの分子構造を立体模型使ってあーでもないこーでもないと考えていた。
ま、要するに仲良しさんだったと。ウィルキンスはクリックと古くから仲が良かった。
一方、ロザリンドとウィルキンスはずっと仲が悪かった、いや最悪だったらしい。

あるときウィルキンス、ワトソンも誘ってのみにでも行ったのだろう。
「あのヒス女がさぁ」とかぼやいたりしてたらしい。
こうしてワトソンとウィルキンスも仲良くなった
ワトソンからすりゃ「悪いとこしか」聞かないからそらいいイメージ持たないわな。
しかもワトソン自身もロザリンドに論争でこっぴどくやられたらしい。

んで、ここからが問題である。
ウィルキンス、あろうことかワトソンに「X線回折」の写真をみせたのだ。
ロザリンドはこの時点でウィルキンスの研究室を辞めたがっていたから
データとか渡して違うとこいこうと思っていたらしい。
なんで一応データの所有権はウィルキンスにある…といえなくもない。

ワトソン自身はそれを見ただけでは何かって言うことの意味はわからなかった。
出身が違うからな。しかしワトソンには強力な友がいた。
物理学出身のクリックである。ワトソンはこういったことだろう

「なんかさ、ヒスのロージィがDNAのX線回折の写真撮ったらしいぜ」
「マジで??」

一方クリックはDNAのAT-GCがどのように結合したかを考えていた。
そこにワトソンのその知らせである。あぁ見てぇなぁそれ
ただこの時点では2人はそういう「情報がある」ということしか知らなかったはずだ。
まぁこの時点ではシロだな。ワトソンには理解できなかったはずだから。
むしろウィルキンスが悪いとも言えなくもない。

もっとひどいのはここからだ。ウィルキンスが英国医学研究機構に年次報告書
提出したのだが(まぁ研究者ならやらされるもんです)、そのレビュアーに
クリックの指導教官であるペルーツがいた。で、あろうことかクリックもそれを
みてしまった。
その中にはロザリンドの詳細なメモ書きまでついてあった。

クリック「せんせー、これみていいですか」
ペルーツ「別にいいよー」
とまぁこういうわけで、クリックはまんまとそのレビューを見てしまった。

あとはもう「…計算どおりである。悪人にだって友情はあるんだぁ!
というわけで二人はそこから得られたデータからDNAの構造を決定し、
あっという間に論文を書き上げネイチャーに投稿し、その論文が世界に衝撃を与えた…

誰が悪いのか…まぁなぁ…悪いっちゃ悪いが…ワトソンとクリックは…
そらロザリンドの机からデータ見たとかならわかりやすい犯罪だが…
ロザリンドの頭上には不幸が、クリックの頭上には幸運があった…
それだけなのかもしれない…でもロザリンド(´;ω;`)かわいそうです。

さてあと2回くらいで生物編最終回。でもその後、ロボット編、量子力学編、
情報工学編がある予定。つまり…あと10回くらいありそうです(´;ω;`)

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